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エリクソンの発達理論からみる、高齢者の心理変化について

老化現象・特性・心理など
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高齢者の心理変化について考える際、エリクソンの発達理論は非常に有用な枠組みとなります。エリクソンの発達理論は、人間の一生にわたる発達を8つの段階に分け、各段階で発生する課題や心理的な変化を説明します。この理論を用いて、高齢者の心理変化に焦点を当ててみます。

エリクソンの発達理論の概要

エリクソンの発達理論は、20世紀の発達心理学者エリク・エリクソンによって提唱されました。この理論は、人間の一生を8つの段階に分け、各段階で特定の発達課題が存在すると主張します。これらの課題を適切に解決することが、健全な心理的発達を支えるとされています。

  • 乳児期(0〜1歳):基本的信頼(希望) vs. 不信
  • 幼児前期(1〜3歳):自律性(意思) vs. 恥・疑惑
  • 幼児後期(3〜6歳):積極性(目的) vs. 罪悪感
  • 学童期(6〜12歳):勤勉性(有能感) vs. 劣等感
  • 青年期(12〜20歳):同一性(忠誠心) vs. 同一性拡散
  • 成人期(20〜40歳):親密性(愛) vs. 孤立
  • 壮年期(40〜65歳):生殖(世話) vs. 自己吸収
  • 老年期(65歳以上):絶対的な価値観の確立・統合(賢さ) vs. 絶望

各段階で課題を達成すると、希望、意思、目的、有能感、忠誠心、愛、世話、賢さという8つの要素を獲得できます。逆に課題を達成できないと、不信、恥・疑惑、罪悪感、劣等感、同一性拡散、孤立、自己吸収、絶望という8つの否定的な要素に陥ります。エリクソンは人間の発達は一生涯続くものであり、各段階で危機を乗り越えることが自我の成長につながると考えました。

それでは高齢者=老年期の心理変化について詳しく探究してみましょう。

高齢者の心理変化とエリクソンの発達理論

高齢者はエリクソンの理論において「絶対的な価値観の確立 VS 絶望」という段階に位置づけられています。この段階では、人々は自分の人生を振り返り、その中で成し遂げたことや経験から生まれる感情や認識が大きな影響を与えます。

  1. 絶対的な価値観の確立:
    • 高齢者は、自分自身や自分の人生に対して前向きな評価を持つことができます。彼らは自分の経験や達成に誇りを感じ、満足感を得ることができます。また、他人や社会に対しても貢献したり、教えたりすることができます。
  2. 絶望:
    • 一方で、絶望とは、過去の選択や行動に対する後悔や不満、未達成の夢や目標に対する失望を指します。高齢者がこの段階で絶望を感じると、孤立感や対人関係の困難が増加する可能性があります。

高齢期における心理変化は、個人によって異なります。以下に、高齢者の心理変化について詳細に掘り下げてみましょう。

自己認識の変化

高齢者は自己認識において大きな変化を経験します。彼らは自分の人生において達成したことを認識し、それに基づいて自己価値感を確立することができます。これは絶対的な価値観の確立の一部であり、自己受容感情が強化されることがあります。一方で、絶望を感じる高齢者は、自己評価が低くなり、自己受容感情が弱まる可能性があります。

生活への適応

高齢者は健康上の問題や社会的な変化に適応する必要があります。エリクソンの理論においては、高齢期における適応は非常に重要です。絶対的な価値観の確立が適切に行われると、高齢者はこれらの変化に柔軟に対処し、健康的な生活を維持することができます。
絶望を感じる高齢者は、適応に困難を感じる傾向があり、身体的、精神的健康に悪影響を及ぼす可能性が高まります。

対人関係の変化

高齢者の対人関係も重要な要素です。絶対的な価値観の確立が進む高齢者は、家族や友人との関係を強化し、孤立感を減少させることができます。また、他人に知識や経験を共有することで、社会的な貢献感を高めることができます。
一方、絶望を感じる高齢者は孤立感を強化し、対人関係が希薄になる可能性があります。

高齢者の心理的支援

エリクソンの発達理論からみると、高齢者の心理変化は絶対的な価値観の確立に焦点を当てています。したがって、高齢者が健康的な心理的発達を遂げるためには、以下の支援が重要です。

  1. 自己認識の促進:
    • 高齢者が自分の達成や経験を振り返り、自己評価を高める機会を提供します。自己評価を向上させる活動やプログラムに参加することが役立つ場合があります。
  2. 適応力の向上:
    • 高齢者が身体的、精神的な変化に適応できるよう、医療、健康管理、社会的サポートを提供します。運動や栄養に関するアドバイスも含まれます。
  3. 社会的つながりの維持:
    • 高齢者が家族や友人との関係を維持し、新しい社会的つながりを築く機会を提供します。地域のコミュニティ活動への参加やボランティア活動は、社会的貢献感を高める手段となります。

まとめ

エリクソンの発達理論を通じて高齢者の心理変化を理解すると、彼らのニーズや課題を把握し、適切なサポートを提供することが可能になります。高齢期は価値観を確立し、人生を振り返る重要な段階であり、心理的な健康に大きな影響を与えます。したがって、高齢者の心理的な健康をサポートするために、個人、家族、社会が協力し、適切な支援を提供することが不可欠です。
高齢者が自分の人生に満足し、完全性を感じることができれば、死を恐れずに受け入れることができます。そして、それは高齢者にとっても、周囲の人々にとっても、幸せな最期を迎えることにつながるでしょう。

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