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認知症の人への心理支援、対応方法を学ぶ

老化現象・特性・心理など
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 認知症の人に対する心理支援とは、認知症の症状や行動に対して、適切な対応や介入を行うことです。認知症の人に対する心理支援には、さまざまな方法がありますが、ここでは回想法、応用行動分析的アプローチ、認知リハビリテーションの3つについて学びます。

回想法、ライフレビューとレミニッセンスについて

 回想法とは、自分の人生を振り返って、その意味や価値を見出すことを目的とした心理療法の一種です。回想法は、高齢者や終末期の患者など、人生の終わりに近づいている人たちに対して行われることが多く、自己肯定感や生きがいを高める効果が期待されます。

  • ライフレビューとは、回想法の一種で、自分の人生を時系列に沿って整理し、その中で重要だった出来事や感情を思い出して共有することです。ライフレビューは、自分の人生に対する理解や受容を深めることができます。また、自分の人生におけるテーマやパターンを発見することもできます。
  • レミニッセンスとは、回想法の一種で、自分の人生に関係する特定のテーマや話題について思い出して話すことです。レミニッセンスは、自分の人生における楽しかったことや苦しかったことなどを共有することで、感情的な安定や社会的なつながりを得ることができます。また、自分の人生における役割や貢献を認識することもできます。

回想法、ライフレビューとレミニッセンスは、それぞれ異なる特徴や目的を持っていますが、共通して自分の人生を振り返ることで心理的な効果をもたらす方法です。自分の人生について考える機会は少ないかもしれませんが、時々は過去を振り返ってみることも大切です。自分の人生に対する感謝や満足感を高めることができるかもしれません。

応用行動分析的アプローチ

 応用行動分析的アプローチとは、認知症の人の行動や感情に影響を与える要因を分析し、その要因に応じて適切な介入を行う方法です。応用行動分析的アプローチでは、三項随伴性(ABC)*下記注釈 という概念を用います。三項随伴性とは、ある行動が起こる前に存在する刺激(先行条件)と、ある行動が起こった後に存在する刺激(結果事象)との関係を表すものです。例えば、「電話が鳴る(先行条件)→出る(行動)→話す(結果事象)」というように、三つの要素が連なっています。

  1. A(Antecedent): この要素では、行動が発生する前に起こる出来事や刺激に注目します。例えば、特定の場面や状況、特定の言葉や動作などが認知症患者の行動に先立って発生することがあります。アプローチの第一歩は、行動の前の状況や要因を特定し、理解することです。
  2. B(Behavior): この要素では、認知症患者の実際の行動を観察・記録し、詳細な分析を行います。行動は、物理的な行動(歩く、手を振るなど)だけでなく、言語的な行動や感情の表現なども含まれます。行動を客観的に記録することで、パターンやトリガーが明らかになることがあります。
  3. C(Consequence): この要素では、行動が起こった後の結果や影響を評価します。認知症患者の行動がどのように反応やフィードバックを引き起こすかを理解することが重要です。例えば、行動によって周囲の人々が関心を示し、患者が注目を集めることがあるかもしれません。また、特定の行動によって不快な状況から逃れることができる場合もあります。

 
 認知症の人の場合、先行条件や結果事象が不適切だったり、不明確だったりすると、望ましくない行動や感情が引き起こされることがあります。例えば、「家族が帰ってくる(先行条件)→喜ぶ(行動)→抱きつく(結果事象)」というパターンがあったとします。しかし、家族が帰ってきた時に無視されたり、叱られたりしたら(結果事象)、喜ぶ(行動)ことが減ってしまうかもしれません。また、「トイレに行きたい(先行条件)→言う(行動)→連れて行ってもらう(結果事象)」というパターンがあったとします。しかし、トイレに行きたい時に言えなかったり、無視されたりしたら(結果事象)、不安や怒りを感じてしまうかもしれません。応用行動分析的アプローチでは、このような三項随伴性を把握し、望ましい行動や感情を促すような前提条件や結果条件を作り出すことを目指します。例えば、「家族が帰ってくる(先行条件)→喜ぶ(行動)→抱きつく(結果事象)」というパターンを維持するためには、家族が帰ってきた時に笑顔で迎えたり、褒めたりすることが必要です。また、「トイレに行きたい(先行条件)→言う(行動)→連れて行ってもらう(結果事象)」というパターンを維持するためには、トイレに行きたいサインを教えたり、言った時にすぐに対応したりすることが必要です。応用行動分析的アプローチは、認知症の人の個性やニーズに合わせて柔軟に対応できる方法です。認知症の人の行動や感情には、必ず意味があります。その意味を理解し、適切な支援を行うことで、認知症の人の生活の質を向上させることができます。 

認知リハビリテーション

 認知リハビリテーションとは、脳の認知機能の低下を予防または改善するために行うリハビリテーションです。認知リハビリテーションには、さまざまな方法がありますが、その中でも、実見当識訓練認知活性療法は、特に有効な方法として知られています。

実見当識訓練とは、記憶、注意力、判断力、問題解決能力などの認知機能を向上させるために行う訓練です。実見当識訓練には、さまざまな方法がありますが、その中でも、以下のような方法がよく用いられています。

  • 記憶訓練:単語や数字を覚える訓練
  • 注意力訓練:雑音や視線を遮断して、特定の物事に集中する訓練
  • 判断力訓練:問題を解決するための思考や判断をする訓練
  • 問題解決訓練:問題を解決するために、必要な情報を収集し、分析し、解決策を導き出す訓練

認知活性療法とは、脳の認知機能を活性化させるために行う活動です。認知活性療法には、さまざまな方法がありますが、その中でも、以下のような方法がよく用いられています。

  • 読書:文章を読むことで、語彙力や理解力を向上させます。
  • ゲーム:ゲームをすることで、思考力や問題解決能力を向上させます。
  • 手芸:手芸をすることで、細かい作業を行うことで、注意力や集中力を向上させます。
  • 音楽演奏:音楽を演奏することで、脳の両側を活性化させます。
  • 散歩:散歩をすることで、脳に酸素を送り込み、認知機能を向上させます。

認知リハビリテーションは、認知症の予防や改善に効果的であることが示されています。認知症のリスクがある人は、早めに認知リハビリテーションを始めることが大切です。

まとめ

 以上が、認知症の人に対する心理支援について学ぶ3つの方法です。これらの方法はそれぞれ異なる特徴や効果がありますが、共通していることは、認知症の人に寄り添い、そのニーズや能力に合わせて支援することです。認知症の人に対する心理支援は、専門家だけでなく家族や地域でも実践できます。認知症の人に対する心理支援を通じて、認知症の人も介護者も幸せに暮らせる社会を目指しましょう。

※こちらの記事【レミニセンスバンプと思い出を刺激するコンテンツの力】も参考になります。 

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