深刻化する老後の食事の問題
日本の高齢化率は年々上昇しており、2025年には30%を超えると予測されています。高齢化に伴い、高齢者の食事の問題も深刻化しています。
高齢者の食事の問題には、以下のようなものが挙げられます。
高齢者の食事の問題
- 噛む力(咀嚼)や飲み込む力(嚥下)が低下する
高齢になると、筋肉や骨格が衰え、噛む力や飲み込む力が低下します。そのため、固い食べ物や嚥下が難しい食べ物が食べにくくなり、食事量が減ったり、栄養不足になったりすることがあります。
- 孤食が増える
高齢になると、家族や友人と離れて暮らすようになる人が増え、孤食が増える傾向にあります。孤食は、栄養バランスが崩れたり、食欲が低下したりする原因となります。
- 味覚が鈍化する
高齢になると、味覚が鈍化し、甘みや塩味などの味を感じる力が弱くなります。そのため、薄味の食事がおいしく感じにくくなり、食欲が低下したり、塩分の摂り過ぎになったりすることがあります。
- 買い物や調理が困難になる
高齢になると、体力や健康状態が低下し、買い物や調理が困難になることがあります。そのため、食材を買う機会が減ったり、自炊が難しくなったりして、栄養バランスが崩れたり、栄養不足になったりすることがあります。
これらの問題を解決するためには、以下の対策が必要です。
食事の問題の対策
- 噛む力や飲み込む力を高める
噛む力や飲み込む力を高めるためには、硬い食べ物や嚥下が難しい食べ物を意識的に摂取することが大切です。ゆっくりとよく噛む事が重要です。また、咀嚼や嚥下を助ける食品や器具を使うことも有効です。
嚥下機能を高める体操に「パタカラ体操」というものがあります。発声しながら口を動かす口の体操のことで口や舌の動きが鍛えられます。
パタカラ体操のやり方
- 口を大きく開けて、舌を突き出します。
- 舌を左右に動かします。
- 舌を上下に動かします。
- 舌を丸めて、口の中で転がします。
- 「パタカラ」と発声しながら、口を動かします。
パタカラ体操は、1日数回、1回10回程度行うとよいでしょう。
- 孤食を防ぐ
孤食を防ぐためには、家族や友人との食事や、社会参加などの機会を増やすことが大切です。 介護保険では通所系サービス(デイサービスやデイケア等)で食事の提供を受ける事ができますので、介護認定受けている方はこれらのサービスを利用するのがいいでしょう。
- 味覚を活かす
味覚を活かすためには、香りや彩りなど、食の見た目や香りを楽しめるように工夫することが大切です。また、味付けを工夫して、食欲をそそるメニューを用意することも有効です。
- 買い物や調理を支援する
買い物や調理が困難な人には、買い物代行や配食サービスなどの支援が有効です。介護保険のサービスでは訪問介護による買い物や調理の支援が可能となる場合もあります。介護認定を受けられる方は検討すべきです。
また、調理を簡単にする食品や調理器具も積極的に活用されるといいでしょう。
手軽に利用できる配食サービスのすすめ
高齢者が自炊する場合、火の始末が心配という問題があります。高齢者の身体能力や認知能力が低下している場合、火の始末がうまくできなかったり、火災などの事故を引き起こす可能性があります。
お年寄りが抱える問題の一つである食事について、配食サービスは有効な解決策として注目されています。配食サービスでは、食事を自分で調理する必要がなく、火の始末の心配もありません。また、食材の準備や調理、後片付けなどの手間も省けるため、高齢者にとって負担の少ない食事提供が可能となります。
こうした配食サービスでは高齢者のニーズに合わせた食事メニューに対応し、たんぱく質や塩分制限の食事メニュー、やわらかく食べやすいメニューなど、高齢者の健康維持に配慮した食事が用意されているものが多いです。
地域によっては自治体が高齢者の食事支援として、配食サービスの利用料の一部を助成する制度を設けているところがあります。 お住まいの市町村の窓口に確認されてみたらよいでしょう。
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