タイの高齢者介護の課題と取り組み★地域包括ケアサービスの発展と日本モデルの活用
タイは急速な高齢化が進む国の一つです。2018年の高齢化率(65歳以上の人口が総人口に占める割合)は約12%で、2022年には14%を超えると予測されています。高齢者の介護ニーズも増加しており、2017年には約155万人(全高齢者の13.8%)が日常生活において介護を必要としていました。
タイの高齢者介護は、長らく家族によって担われてきました。しかし、家族構成や生活習慣の変化により、その傾向にも変化が起きつつあります。介護者の内訳を見ると、一番大きな割合を占めているのが子供(娘40.6%、息子12.7%)であり、その次に配偶者(32.2%)、兄妹/甥姪/孫などの親族(9.5%)と続いています。しかし、子供や親族が都市部で働いていたり、海外に移住していたりする場合も多く、高齢者が孤立するリスクも高まっています。
そこでタイ政府は、高齢者のための地域包括ケアサービスを整備するためにさまざまな取り組みを進めています。その一つが、JICAとの協力プロジェクト「高齢者のための地域包括ケアサービス開発プロジェクト(S-TOP)」です。このプロジェクトでは、地域での医療・リハビリテーション・生活支援といった切れ目のないサービス提供を通じて、高齢者が病院から在宅生活にスムーズに移行できるようなモデルを構築し、やがてはタイ全土まで広げることを目指しています。
また、タイでは約100万人の村落保健ボランティアと数万人の高齢者ボランティアというケアサービスの担い手が大勢います。これらのボランティアは、高齢者の健康状態や日常生活自立度に応じて3つのグループ(自立高齢者、半自立高齢者、非自立高齢者)に分類された高齢者を訪問し、健康チェックや相談・助言・情報提供などを行っています。また、役所内やお寺でデイサービス的なケアも提供されており、マッサージやレクリエーションなどが行われています。
タイは日本よりも早いペースで高齢化が進んでおり、日本が培ってきた高齢者介護の知見や経験を活用することで、タイの高齢者介護の発展に貢献できる可能性があります。しかし、単に日本のモデルを輸入するのではなく、タイの文化や社会に合わせて適応させることが重要です。タイの高齢者介護は、家族や地域のつながりやボランティアの活動によって支えられています。そのようなタイの特色を生かしながら、高齢者の尊厳や自立を保障するケアサービスを提供することが、今後の課題となります。
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