マレーシアにおける高齢者問題とその解決に向けた取り組み
マレーシアは、日本と同様に人口の高齢化が進んでいる国の一つです。2020年には、全人口の約10%が60歳以上の高齢者となりました。この割合は、2030年には15%、2050年には24%に達すると予測されています。
では、マレーシアの高齢者はどのように暮らしているのでしょうか?マレーシアには、日本のような介護保険制度はありません。また、伝統的な価値観から、家族が高齢者の面倒を見ることが一般的です。そのため、多くの高齢者は自宅で家族と暮らしています。しかし、近年は都市化や核家族化などの社会変化により、家族が高齢者を支えることが困難になってきています。その結果、高齢者の孤立や貧困、虐待などの問題が深刻化しています。
マレーシアでは、高齢者向けのサービスや施設はまだ十分に整備されていません。政府や民間が運営するナーシングホームや有料老人ホームは存在しますが、数は少なく、費用も高額です。また、医療ケアや介護の質や規制も不十分です。そのため、多くの高齢者は住み込みの家政婦やボランティアなどを頼っています。しかし、これらのサービスも不安定で不足しています。
マレーシアでは、高齢者の健康状態も懸念されています。高齢者の約75%が複数の慢性疾患を抱えており、特に高血圧や糖尿病などが多いです。しかし、高齢者の半数以上が受診を控えており、未診断や未治療のまま放置されている場合もあります。また、認知症やうつ病などの精神的な健康問題も増加しています。
マレーシアでは、高齢者のニーズに応えるために様々な取り組みが行われています。例えば、日本老年学的評価研究(JAGES)という調査ツールを用いて、高齢者の健康と機能の状態を測定しました。この調査ツールは日本で開発されたもので、マレーシアでは初めて適用されました。この調査により、高齢者の健康格差やサービス利用の実態などが明らかになりました。これらのデータは、政策やプログラムの策定に役立てられます。また、高齢者の社会参加や生きがいを支えるために、コミュニティベースの活動やイベントも開催されています。例えば、高齢者のスキルや経験を活かしたボランティアやメンター制度、高齢者同士の交流や学習を促すサークルやクラブ、高齢者の健康や福祉を向上させる運動や講座などです。これらの活動は、高齢者の孤立や孤独感を減らし、自尊感情や幸福感を高める効果があります。
マレーシアの高齢者の生活や介護は、まだまだ課題が多いです。しかし、高齢者自身や家族、コミュニティ、政府などが協力して、より良い環境を作っていくことが必要です。日本とマレーシアは、人口の高齢化に直面している国として、互いに学び合い、支え合うことができると思います。今後も、高齢者の声に耳を傾け、高齢者にとって快適で安心できる社会を目指していってもらいたいものです。
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