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「もしバナゲーム」で考える人生の最期 – 終活の新しいアプローチ

人生の最期を考える 老後の備え
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はじめに

人生の最期について考えることは、多くの人にとって避けたい話題かもしれません。しかし、自分らしい最期を迎えるためには、元気なうちから考え、大切な人と共有しておくことが重要です。そんな「終活」の新しいアプローチとして注目を集めているのが、「もしバナゲーム」です。このゲームは、カードを使って楽しみながら、自分の価値観や大切にしたいことを見つめ直すきっかけを提供します。今回は、このユニークな終活ツールについて詳しく見ていきましょう。

「もしバナゲーム」とは

「もしバナゲーム」は、「もしものための話し合い(=もしバナ)」をするきっかけを作るために、医師たちが開発したカードゲームです。アメリカの「GO WISH GAME™」をもとに、日本の医療現場の実情に合わせて作られました。ゲームの設定は、「治療困難な病気で、あと半年から1年の命と言われたら、あなたは何を大切にしたいですか?」というものです。この問いかけを通じて、プレイヤーは自分の価値観や人生の優先順位について深く考えることができます。

ゲームの内容と進め方

カードの構成

1セットには36枚のカードが含まれています。そのうち35枚には、重病のときや死の間際に大事だと考えられることが書かれています。例えば:

  • 「痛みがない」
  • 「家族や友人と過ごす時間」
  • 「自分の人生を振り返る」
  • 「精神的な平安を得る」
  • 「お金の問題を整理しておく」

残りの1枚は「ワイルド・カード」で、他の35枚には書かれていない独自の希望がある場合に使用します。

遊び方

「もしバナゲーム」には、いくつかの遊び方があります。代表的なものを紹介しましょう。

1. ソリティア(1人用)

  1. 36枚のカードの中から、ルールに従い10枚を選択します。
  2. 選んだ10枚がなぜ自分にとって重要なのか、理由を考えます。
  3. 選ばなかったカードについても、なぜ選ばなかったのか理由を考えます。

この方法で、自分にとって何が本当に大切なのかを深く掘り下げることができます。

2. ペアーズ(2人用)

  1. 2人で1セットのカードを使い、交互に進めていきます。
  2. お互いの選択について話し合いながら進めます。

家族や大切な人と一緒に行うことで、お互いの価値観を共有し、理解を深めることができます。

3. ヨシダルール(4人用)

これは日本独自のルールで、より短時間で気軽に楽しめるように考案されました。

  1. 各プレイヤーに5枚ずつカードを配り、場に5枚のカードを表向きに置きます。
  2. 順番に、手札と場のカードを1枚ずつ交換していきます。
  3. 全員がパスするまで続け、最終的に手元に残った5枚から3枚を選びます。
  4. 選んだ3枚について、なぜ重要だと思ったかを他のプレイヤーに説明します。

このルールでは、自分の価値観を見つめ直すだけでなく、他の参加者の考えを聞くことで新たな気づきを得られる点が特徴です。

「もしバナゲーム」の意義と効果

1. 自己との対話

ゲームを通じて、普段意識しない自分の価値観や人生の優先順位を深く考える機会が得られます。カードを選ぶ過程で、自分が本当に大切にしたいことが明確になっていきます。

2. 心の揺らぎを受け入れる

カードを選ぶ際に感じる迷いや葛藤は、実は非常に重要な要素です。開発者の一人である大川さんは、「もしバナゲームで大事なことの一つは、自分にとって大切なことを選択する際に感じる心の揺らぎを体験すること」と述べています。この心の揺らぎこそが、自分の本当の価値観を探る手がかりとなるのです。

3. 死と向き合う勇気

普段避けがちな死について考える機会を提供してくれます。しかし、これは決して悲観的なものではありません。むしろ、残された時間をどう過ごすかを考えることで、今の人生をより豊かにする視点が得られるのです。

4. コミュニケーションの促進

家族や友人とゲームを行うことで、普段はなかなか話題にしづらい「もしも」の話を自然に始められます。お互いの価値観を知り、理解を深めることができます。

5. 医療現場での活用

医療や介護の現場でこのゲームを行うことで、スタッフが「もしも」のことを自分事として考えたり、患者や入居者それぞれが「大切にしていること」やその「変化」に気づいたりすることができます。

「もしバナゲーム」の活用事例

1. 家族間でのコミュニケーション

ある家族は、このゲームをきっかけに、普段は話題にしづらかった終末期の希望について話し合うことができました。親子間で価値観の違いに気づき、お互いを理解し合う良い機会となったそうです。

2. 医療機関での研修

ある病院では、新人看護師の研修にこのゲームを取り入れています。患者の立場に立って考えることで、より深い共感力を養うことができると好評です。

3. 高齢者施設でのアクティビティ

デイサービスセンターでは、利用者同士の交流を深めるアクティビティとして「もしバナゲーム」を導入しました。参加者からは「人生を振り返るいい機会になった」「他の人の考えを聞けて新鮮だった」といった感想が聞かれています。

4. 終活セミナーでの活用

終活をテーマにしたセミナーで、アイスブレイクとしてこのゲームが使われています。重たくなりがちな話題を、ゲーム形式で楽しく導入できると好評です。

「もしバナゲーム」の課題と今後の展望

1. 文化的な配慮

日本語版を開発する際、原文に忠実な翻訳を心がけたそうです。しかし、例えば「神様」や「祈り」に関連したカードなど、日本の文化や信仰の背景を考えると不要ではないかという意見もあるそうです。開発者は、自分の価値観とは離れた選択肢を見てモヤモヤすることも大切だと考え、あえて残したとのことです。

2. 重たいテーマへのアプローチ

死や終末期という重たいテーマを扱うゲームであるため、参加者の心理的負担に配慮する必要があります。ファシリテーターの役割や、フォローアップの方法など、さらなる検討が必要かもしれません。

3. 普及と認知度向上

「もしバナゲーム」の効果が認められつつある一方で、まだ一般的な認知度は高くありません。医療機関や介護施設、学校教育など、さまざまな場面での活用を広げていくことが課題となっています。


4. デジタル版の開発

現在はカード形式のアナログゲームですが、より多くの人が気軽に体験できるよう、スマートフォンアプリなどのデジタル版の開発も検討されているそうです。

まとめ:「もしバナゲーム」が目指す未来

「もしバナゲーム」は、単なる終活ツールではなく、「もしも」の話を自然に、そして前向きに語り合える社会の実現を目指した対話のためのツールです。人生の最期や死について考えるきっかけを提供し、自分の価値観や大切な人の考え方に向き合う機会をつくります。このゲームを通じて、価値観の多様性や人の気持ちが揺れ動くことを理解することで、たとえ誰かの考え方が変わったとしても、それを受け入れる柔軟な姿勢が育まれるでしょう。

また、家で死を迎える機会が減り、死を身近に感じることが少なくなった現代社会において、このゲームは若い世代にとっても重要な役割を果たします。医療や死に関する判断の機会が訪れた際に備え、自分自身や他者の生と死について深く考えるきっかけとなります。さらに、死を意識することで「今をよりよく生きる」ことの大切さに気付かせてくれる点も、このゲームの魅力です。

「もしバナゲーム」は、多くの人が人生や価値観に向き合い、大切な人との対話を通じて互いの理解を深める助けとなります。そして、誰もが納得のいく人生の最期を迎えられる社会に少しずつ近づいていくことが期待されています。

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